辿りついた建築

辿りついた建築

建築

4月から取り組んできた木造戸建てリノベーションが完成に近づき、昨日、現場に長めに滞在して空間を感じていました。

線で構成する、数寄屋のような、柱で間仕切る、段差で間仕切る、造形的に作る、構造強度を確保する、つくってる途中の方がかっこいいなど様々な自問自答を繰り返しながら設計した建築です。

佇みながら感じたことは、考えてきたこれらのことが混在しながら共立している空間が本当にできあがったという驚きでした。どれかが強調されるでもなく、ぶつかり合うでもなく、共に成立している。不思議です。

この感覚は一度だけ感じたことがあって、大学の卒業制作の時です。

大学の卒業制作は半年間それのみをやっていたことや、自分と相棒の2人だけで設計から施工までやっていたことで純度が高い空間をつくり出すことができ、複雑に絡み合った多岐にわたる混在をカタチにすることができたということは何となくわかっていたのですが、現実の社会で建築をやるとそんなことができるわけもなく・・・。

ただ、あきらめの悪いわたしは建築業界の常識にとらわれず、設計や施工の体制、プロセスを10年間の実務経験と7年間の自分の会社で研究、構築し続けた結果、卒業制作と同じような純度の高い建築が遂にできあがりました。

それも卒業制作とは異なり、クライアントがいて、メーカーや職方がいて、機能性を確保して法律も遵守して。

そして、ずっと目指していたのはココだったのかと肚に落ちました。

卒業制作を2002年につくってからちょうど20年。時間はかかりましたが何ものにもかえがたい喜びを感じています。

そして、自分がやりたいこと、できることは建築を通してクリエイティブを提供すること、クリエイティブを皆で協同、共感できること、そしてそれが社会の豊かさや楽しみにつながっていくことだとあらためて確信しました。

これからまだまだ建築をつくっていく日々が続きますが、こんな風に思える建築をつくり続けていきたいとあらためて決意しました。