建築家の建築のリノベーション

建築家の建築のリノベーション

建築

現在取り組んでいる鉄筋コンクリート3階建てのリノベーション。

対象建築は建築家が手掛けた自邸です。

とてもよく考えられた建築で、プロポーションやディティールだけでなく、暮らしの寸法設定やインフラ手法まで常識にとらわれず、建築家自身の考えで設計された建築です。

これまでリノベーションをしてきた建築は、ハウスメーカーや工務店が新築したものや、一般的なマンションなどが主で、建築家による建築のリノベーションは初めてです。

最初は違いを深く理解していなかったため、いつも通りの手法でリノベーションにアプローチしてきましたが、どうもしっくりいきません。何度かアプローチし続けるうちに違和感の正体が、考えられた建築とあまり考えられていない建築の大きな違いです。

いつもはあまり考えられていない建築をリノベーションするので、考えられていない空白部分を埋めるように考えを足していったり、まったく考えられていない部分を再構築できるように設計してきました。

そして、これが普通のことだと思い込んでいました。

しかし、今回、考えられている建築と対峙した時に、いくら探してもそのような隙間がないことに気づき、同じ手法で設計を進められないことを悟りました。そして、このプロジェクトでまず必要なことは、既存建築で建築家が考えたことを読み解くことだと理解しました。それができてはじめてその先の改修への道が見えてきます。

丁寧に考え、つくられたものをゼロに戻してつくりかえるのではなく、かつて積み重ねられた思考を引き継ぎ、最大限に活かし、そこに添えながら積み重ねていくことが今回のリノベーションの手法になると思いました。

京料理は添えることだと昔教えられたことがありますが、素材を深く理解したうえで素材の味に添えるだけ、という建築を今回はつくってみたいと思うようになりました。

わたし自身、建築を見て回る時は、その建築家と建築を介して会話していますが、今回は建築を介して会話しながらプロジェクトを協同できるような気がして楽しみです。

そして、今回はこの建築家の方がご存命なので実際にお話しできる状況であり、それも楽しみです。

クライアントの要望をカタチにしていくということは今までと同じでありながら、つくるというより添えるという新たな手法の試みが始まります。