大学の卒業制作を振り返って

大学の卒業制作を振り返って

建築

「人は身体に刺激を受けると記憶が蘇ることがある。この現象は、脳が働いて体を動かすこととは全く逆の現象である。都市空間において、ありえない段差を乗り越えたときに起こる「懐かしい」という記憶の喚起、金木犀の匂いがしたときの「切ない」思い、これらは身体が刺激を受けた結果起こる脳の反応であり、脳はかつて受けた身体への刺激を記憶とともに憶えている。

現在の都市にはそういった記憶に結びつくような空間が減少している。

今回、武蔵野美術大学内に、身体への刺激がほとんどない通路に並行して、身体の記憶を喚起したり、身体への記憶の保存を行う建築物を建てることにより、その場所をきっかけに忘れていた記憶が蘇ったり、今日という日が、そこを訪れた人の身体に埋め込まれるような空間を作り、建築と人との記憶を介した関係づくりを目指す。」

大学の卒業制作のコンセプトとして当時の自分が書いた文章を15年ぶりぐらいに読みました。

「建築と人との記憶を介した関係づくりを目指す」

具体的には、

  1. 身体の記憶を身体の記憶を喚起したり、身体への記憶の保存を行う建築物を建てることで
  2. その場所をきっかけに忘れていた記憶が蘇ったり
  3. 今日という日が、そこを訪れた人の身体に埋め込まれる

ということなんですが、現在の自分が建築をつくるうえで大切にしていることが、とても高い純度で言語化されているように感じました。

年齢を重ねると技術的なことはたくさん見につく変わりに、余計な知識が邪魔をしてしまうような気もします。

まっすぐな自分の言葉に向き合ってみようと思います。